医療×DX

 デジタルトランスフォーメーション。通称DX

 昨今は、コロナの流行と技術進化に伴う社会の変化速度が加速しており、この言葉が浮上してきています。このDXとは”デジタル技術によるビジネス革命”。新しい技術を使って、付加価値を生み出すこと、業務の生産性を高めること、人々の生活をよりよいものへと変革することなど

DXとは課題があり、それを技術で改善していくこと

 看護師である私がDXに興味を持ち始めたのは、看護師の多くはITスキルが不十分であることと年功序列ではなくスキル重視の働き方への可能性を考えたためです。原体験を踏まえて説明すると、「学校教育がまだ紙で行われていたこと」と「実際の職場でパソコンの操作と電子カルテの使い方をよく聞かれたこと」からそのように考え始めました。看護実習では、患者さんの情報収集し、その情報を用いて、患者さんの問題点を考えていきます。この情報収集から、問題点に至るまで紙にすると文字はぎっしり埋めた状態15枚ほどになり多くの文字を書かなければなりません。また、中には反復することもあるため同じことを繰り返し書くこともあります。実際の現場では、経験年数は関係なく、パソコンやソフトに関しては私に聞いてくる事が多いです。理由として大きいのは男子だから。だと思います。これらのことからわかることは「看護師さんたちはITスキルが低い可能性があること」と「情報技術系であれば年功序列関係なくスキルが重視される可能性があること」であることがわかります。

医療になぜDXが必要なのか

医療になぜDXが必要なのかを考えるためにまずは、「日本の医療の課題はなにか」を考えていきます。

日本の医療の課題は大きく分けて以下の3つです。

  1. 急激な人口動態の変化
  2. 社会保障費の増大
  3. 医療人材の不足

急激な人口動態の変化

日本は超高齢社会と言われているように、高齢者(65歳以上)の人口が多く、働き世代の人口が少ない社会になっています。高齢者人口は、「団塊の世代」が65歳以上となった2015年に3392万人となります。そのまま増加して2030年には、3865万人に達すると予想されます。高齢者人口はその後も増加をし、2042年をピークに減少に転じると予想されています。生産年齢人口(65歳以上の高齢者人口と、15歳から64歳までの現役世代の比率)は、2030年時点で高齢者1人を現役世代1.8人で支えていく必要があります。ただここで気をつけたいのが高齢化時代が課題なのではないことです。本当の課題は、高齢化によって引き起こされる「経済規模の縮小」「社会保障制度の財政の持続可能性」「生活を蝕む疾患の増加」があります。現時点で、高齢化問題では、高齢化自体にアプローチする解決方法ではなく、高齢化に付随する課題に対してアプローチしていくことが効果的です。

社会保障費の増大

高齢化の影響により、医療費は増加しています。医療費だけではなく、年金や福祉を含めた社会保障給付費も同様に年々増加を続けています。2000 年度の 78.4 兆円から2020年には126.8兆円となっています。社会保障費は、年金53%、医療費32%、福祉20%の割合です。今後高齢者の増加に伴い、高齢者関係の給付費は増加し続けると予想されています。

医療人材の不足

医療業界は、病院、事業所、クリニックなどの多くのところで人材不足の課題を抱えています。2019年時点で全職種の有効求人倍率は1.57でしたが、看護師は2.59、介護サービスは4.47、医師は4.59と全職種の有効求人倍率を大きく上回っております。参考記事

課題を解決するのはDX

 上記の医療における3つの課題は、今後も人口動態の変化につれより大きな課題になってくるとされています。これらの課題を解決するために、スマートフォンやウェアラブルデバイス、IoT機器、AI、クラウドなど様々なデジタル技術を用いることが推奨されています。経済産業省は、ヘルスケアITをビジネスに対する投資を行い、国民・患者や医療関係者への還元を目標としています。参考pdf

医療×DXの現状

 DX化の必要性は理解できたと思います。次は、医療☓DXの現状についてみていきます。日本自体がDXに遅れているとされていますが、私が働いている医療業界は、さらに遅れています。電子カルテでDXの現状をみていきます。

 下記の通り、電子カルテの普及率は、400床以上では77.5%ですが、400床以下の病院や診療所では、50%を下回っています。カルテに注目すると紙の電子化が進んでいない状況です。

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図表3-3-8 電子カルテの導入率(一般病院)厚生労働省の平成29年版厚生労働白書 −社会保障と経済成長−の図表3-3-8 電子カルテの導入率(一般病院)を掲載していまwww.mhlw.go.jp

そもそもDX化とはなにか

 「デジタルヘルストレンド2021」では、サービス提供者の視点に立つとDX化には、「パーツのデジタル化」「フローのデジタル化」に分別できると書かれています。

 「パーツのデジカル化」とは、今までアナログだったものの一部をデジタル化することを指しています。例として、「紙カルテから電子カルテにする」カルテのデジタル化、「病院診察をオンライン診察にする」診察のデジタル化のようなものです。

 パーツのデジタル化」は、単独である部分のデジタル化を意味しています。

 「フローのデジカル化」とは、単独であったデジタル化したものがプロセスとして繋がり、データが集積されることを指しています。例として、「病院診察をオンライン診察にした」あとに、患者さんの病態や不安、状況、活用状況、治療などデータを蓄積して、活用できるデータモデルの構築するようなものです。

 「フローのデジカル化」とは、デジタルした部分の活用化を意味しています。

 前回と同様に紙カルテから電子カルテへのデジタル化、つまり「パーツのデジタル化」で考えてみると、医療現場においてデジタル化・DX化はいまだ「パーツのデジタル化」があまり進んでいない状況です。

 予約診察の状況を考えてみても、いまだ電話で対応していることが多く、「パーツのデジタル化」が進んでいない状況にあります。「フローのデジタル化」までいくためには、電子カルテにしたあとに、電子カルテ上にあるデータを活用できるデータにしていかなければいけません。

DXの目的とはなにか

 ここで目的を見失ってはいけないのが、「パーツのデジタル化」、「フローのデジタル化」したはいいものの「DXの目的はなにか。」です。この2つのデジタル化では、サービス提供者の視点に立っていましたが、目的を考えるとサービスを受ける患者さんや生活者の視点が必要となってきます。

 このサービス提供者視点から患者や生活者の視点への転換をDX化と著・加藤さんは述べています。DXの目的とは、この「パーツのデジタル化」、「フローのデジタル化」を経て、

サービスを受ける患者さんや生活者の視点を解釈して、新しい価値を見出すものにする」

ことです。

DXがトレンドで終わらないために

 それではただDX化すればいいのでしょうか。

 紙カルテから電子カルテに。カルテをDX化。ただDX化すればいいというものはないです。何を目的にするか。そして、DX化して、DX化しない場合も含めて考えていく必要があります。実際の紙カルテから電子カルテで考えてみると、「紙カルテから電子カルテにすることで誰がどのような、そしてどんなときにメリットがあるのだろうか、反対にどのようなデメリットがあるのだろうか。」といった疑問が湧いてきます。

 紙カルテの場合、紙には慣れているのですぐに使える、停電時に対応できる、バグがない、緊急時にすぐに対応できる。

 電子カルテの場合、拡散性がある、保存性能が高い(データとして撮っておける)、場所のスペースを取らない。

 比較を踏まえて、業務や製品をDX化していくべきかいくべきではないかを考えていく必要があります。ただここでの課題は、紙カルテのことは知っていますが、電子カルテのことはあまり知らないため紙カルテを選んでしまう可能性が高いことです。医療におけるDX化の課題は、「ITリテラシーが低いことによる変化への恐れ」の可能性が高いです。

まとめ

 これからの医療のDX化で必要な力は、「ITリテラシーを身につけること」「目的を考え、何が課題かを把握し解決していく力」が必要になってきます。あくまでもデジタル技術は手段でしかないことを忘れてはいけません。手段の目的化に注意しなければなりません。

重要なのは、何が目的で何が問題なのか。

これには、紙面だけの情報、口頭だけの情報だけではなく現場の空気を感じ、課題を考えて、解決策を考える姿勢が重要になってきます。DX化とは、この「パーツのデジタル化」、「フローのデジタル化」を経て、「サービスを受ける患者さんや生活者の視点を解釈して、新しい価値を見出すものにする」こと。サービス利用者の視点を忘れずに、医療のDX化進めていくべきです。

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